不妊治療

当院は平成12年の開院以来、不妊治療を行っており、今までに20代~40代の方が当院にて治療を受け、妊娠されています。
お仕事をされている方も通いやすいように20時まで診察を行っています。
治療に悩まれている方は医師、培養士が相談に応じますので、一度ご来院ください。

不妊症とは

妊娠を希望しているにもかかわらず、1年以上赤ちゃんができない状態を言います。
一般に通常の夫婦生活を送っていれば、結婚して半年で7割程度、1年で9割程度が妊娠すると言われています。近年晩婚化が進み、妊娠を考える年齢が上昇しています。そのため不妊症の割合が年々増加し、現在では10組に1組とされています。
不妊症の原因は様々ですが、治療が遅れることで妊娠率が下がってしまうことを考えると、ご夫婦揃っての早めの検査や治療を行うことをお勧めします。

初めての方へ

まずは問診にてお子様を希望してからの期間や今までの治療経過をお尋ねします。
その後エコーにて現在の状態を確認していきます。
今後の治療の流れをお話しさせて頂き、時期に合った検査から行っていきます。
治療についての不安や疑問があればスタッフにお声かけ下さい。
詳しいお話が聞きたい方は培養士のいる午前診の受診をお勧めしています。

治療の流れ

基礎体温
タイミング法
人工授精
体外受精・顕微授精

まずは基礎体温を記録していただきます。
それと同時に必要なタイミングで採血にてホルモン検査を行います。
排卵時期に合わせてタイミング法や人工授精を施行します。
回数は患者さまの背景や希望によって異なりますが、各3回を目安にしています。
それでも妊娠に至らない場合は体外受精へのステップアップをお勧めします。
体外受精へステップアップする場合は治療についての詳しいお話を培養士が個別にさせていただきます。

治療に用いる注射薬について

治療を進めていく中で、当院では以下の注射薬を使用しています。

  • hMG:卵巣を刺激し、質の良い卵子を育てます。
  • HCG:排卵のタイミングをはかり、黄体の形成を助けます。
  • プロゲステロン:子宮内環境を整え、着床しやすい状態にします。

一般不妊検査

治療を進めるにあたり経膣超音波検査以外に以下の検査を行っていきます。
検査結果をもとに、患者様それぞれに合った治療方針を決定していきます。

精液検査

精液量、精子数、精子の運動性を検査します。
不妊症の原因の約半分は男性因子と言われているため、早い段階で精子の有無を確認しましょう。
検査は午前の診察時間内で予約をお取り下さい。

卵管造影検査

子宮内部の状態、卵管の通過性を検査します。
当院では油性の造影剤を使用しています。卵管が拡張することにより、検査後約半年間は妊娠しやすい状態になります。
しかし、クラミジア感染症等により卵管が詰まってしまっている場合、タイミング法や人工授精での妊娠が困難です。そのため体外受精へステップアップの必要があります。
予約制となっており、生理周期に合わせて処方薬を飲む必要がありますので検査をご希望の方は一度ご来院下さい。

ホルモン検査

生理5日目~7日目に治療に必要なホルモン検査を行います。主にLH,FSH,プロラクチンの値を調べ、ホルモン環境に問題がないか確認します。
E2(エストラジオール)とプロゲステロンは毎月排卵前後に採血でチェックし、良い卵子が育っているか、着床環境が整っているかを確認します。この値は毎周期異なります。

AMHセット

AMHセットはクラミジア感染症、風疹抗体、甲状腺機能、血糖、貧血、AMHが含まれます。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは、卵巣の中に卵子がどれぐらい残っているかを示すホルモンです。一般的には年齢と共に低下していくため、現在のホルモン値を知ることが大切です。

タイミング法・人工授精

タイミング法

お子様を希望してからの期間が短く、上記の検査にて異常がなかった方にはタイミング法を行います。
生理10日目ごろよりエコーにて卵胞の発育を観察しながら排卵時期を予測します。卵胞が十分に育ったら排卵を促す注射(HCG)を打ち、排卵時期に合わせて夫婦生活を取っていただきます。

人工授精

タイミング法で結果が出ない方、お子様を希望してから1年近く経過している方には人工授精を行います。
タイミング法と同じく、生理10日目ごろよりエコーにて卵胞の発育を観察しながら排卵時期を予測します。卵胞が十分に育ったら排卵を促すための注射(HCG)を打ち、その翌朝に人工授精を行います。
当日はご自宅にて精子を採取して頂きます。洗浄濃縮処理を行い、元気な精子だけを回収し、カテーテルを用いて直接子宮内に注入します。処理には1時間ほどお時間をいただいておりますが、その後お仕事へ行ってもらって構いません。

体外受精・顕微授精(IVF・ICSI)

体外受精とは体外に卵子を取り出し、精子と一緒にして受精させ、できた受精卵を子宮に戻す治療です。
対象となる方はタイミング法、人工授精からのステップアップや体外受精でしか妊娠できないと判断された方(卵管性不妊や男性不妊など)です。治療に入る前に治療のスケジュールや採卵後の流れについて培養士が詳しくご説明致します。

採卵周期

卵巣刺激

良質な卵子を育てるための注射(hMG)を連日投与します。

排卵誘発

採卵日の2日前にHCGを投与し、卵子を成熟させます。

採卵

経膣超音波にて卵胞を確認しながら卵子を採取します。

受精

精子を卵子にふりかけ(媒精)、受精をさせます。
精子が少ない男性不妊症の方は顕微授精を行います。

培養

受精卵を5日間培養します。

凍結

良好な受精卵が得られた場合、凍結を行います。
凍結した受精卵は次周期に移植します。

移植周期

  • 生理10日目ごろよりエコーにて卵胞の発育を観察しながら排卵時期を予測し、移植日を決定します。
  • 移植当日に凍結胚を融解します。その際、対象の方にはアシステッドハッチング(AHA)を行います。
  • 移植日から約10日後に妊娠判定を行います。

費用

人工授精 5,460円
体外受精 6.2万円~
顕微受精 6.4万円~
胚移植 3.6万円~(+AHA代別途3000円)

2022年4月より保険適用となり、自己負担の金額を上記に記載しています。
治療周期における注射や採血、超音波検査などの費用は別途かかります。

※ 保険適用時の詳しい料金については医師もしくは受付にお声掛け下さい。
※ 費用は保険点数に準ずるため、改定に伴い変更する場合があります。
※ 上記の体外受精・顕微授精の費用は採卵から凍結までの費用で、採卵した卵子の個数により費用が変動します。
※ 体外受精では胚移植の回数を基準として、保険適用で算定できる回数制限(40歳未満:6回、40歳以上43歳未満:3回 )があります。回数を超えた場合、自費での治療となります。自費の料金については医師もしくは受付にお声掛け下さい。

成績

人工授精

当院における近年の人工授精による妊娠率は以下の通りです。40歳未満の方は概ね15%前後ですが、40歳以上になると6%となってしまいます。また、人工授精で妊娠された方のうち大半が2回目までの人工授精で妊娠されています。
以上の結果より、当院では人工授精の目安を3回とし、その後は体外受精へのステップアップをお勧めしています。

人工授精による年齢別妊娠率
人工授精による回数別妊娠率

体外受精

当院における近年の体外受精の成績です。
40歳未満の方は1回の採卵で約60%の方が妊娠されています。40歳以上の方は約30%となっています。1回の採卵で採れる卵子の個数、得られる良好胚数は年齢と共に減少傾向にあるので、年齢の上昇に伴い妊娠までの採卵回数は増加します。
移植あたりの妊娠率においては年齢の上昇と共に低下していますが、30~40%を推移しています。

採卵あたりの年齢別妊娠率
凍結融解胚移植あたりの年齢別妊娠率

※妊娠率は妊娠検査薬が陽性になった割合
臨床妊娠率は胎嚢が確認できた割合
妊娠継続率は出産まで至った割合